インプラントの耐用年数はどれくらい?寿命を延ばすためのポイントを歯科医師が解説
2025年11月15日
インプラント治療を検討する際、「どれくらい長持ちするのだろう?」と疑問に思う方は少なくないでしょう。失った歯の機能を補うための治療だからこそ、その耐用年数や寿命は気になるポイントだと思います。
この記事では、インプラントの平均的な寿命、他の治療法との比較、そして大切なインプラントを一日でも長く使い続けるためのポイントについて、分かりやすく解説します。
インプラントの耐用年数とは?
インプラントは、適切なケアとメンテナンスを行うことで長期的に機能することが期待できる治療法です。しかし、「一生もの」と断言できるわけではなく、様々な要因によって寿命は変わってきます。
インプラントの平均的な寿命
インプラント治療後の10年残存率は90%以上という報告が多く、平均的な寿命は10年〜15年といわれています。これは一般的な目安であり、日々のケア次第で15年以上使える場合もあります。
“歯科インプラントの長期(10年)生存率:系統的レビューと感度メタアナリシス
PubMed
Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis”
“歯科インプラント治療の9~15年間の追跡調査
PubMed
A 9- to 15-year retrospective follow-up of dental implant therapy”
“10,871本の歯科インプラントの15年までの長期臨床成績
PMC
Long‐term clinical performance of 10 871 dental implants with up to 15 years”
比較として、部分入れ歯の平均寿命が4〜5年程度とされることからも、インプラントは長期的に安定しやすい治療法といえます。
他の治療法との寿命の比較
歯を失った際の治療法にはブリッジや入れ歯もあります。以下にそれぞれの寿命や特徴を比較します。
| 治療法 | 平均寿命の目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| インプラント | 10年~15年 | ・天然歯のように噛める ・健康な歯を削らない ・見た目が自然 | ・外科手術が必要 ・治療期間が長い ・費用が高い |
| ブリッジ | 7年~8年 | ・短期間で治療可能 ・違和感が少ない | ・健康な歯を削る ・支えの歯に負担 |
| 入れ歯 | 4年~5年 | ・多くの症例に対応 ・費用を抑えられる ・外科手術不要 | ・ズレや違和感 ・硬い物が噛みにくい ・手入れが必要 |
インプラントの寿命を左右する要因
インプラントの素材と品質
主流はチタン製。生体親和性が高く骨と強く結合します。近年は金属アレルギー対策としてジルコニア製も登場。
信頼性あるメーカー(例:ストローマン社、オステム社)など実績のあるメーカーを選ぶことが長期安定につながります。
口腔環境と生活習慣
最大の敵はインプラント周囲炎。プラークが原因で骨が溶ける病気です。喫煙、糖尿病、歯ぎしりも寿命を縮める要因です。
- 喫煙:血流を悪化させ治癒を妨げる
- 糖尿病:免疫低下により感染リスク上昇
- 歯ぎしり:過度な力で破損の原因
インプラント耐用年数に影響する疾患は
上で少しご説明しましたが、インプラントの耐用年数には糖尿病など疾患をはじめとした全身状態(全身的リスクファクター)が関係してきます。
どのようにインプラントの耐用年数に関係するか、各疾患をまとめてみました。
| 疾患・因子 | 耐用年数への影響(10年生存率・リスク比) | 主なメカニズム | 対応策・管理 | 参考文献 / URL |
|---|---|---|---|---|
| 糖尿病 | 10年生存率 約89〜92%(非糖尿病群より約3〜5%低) 失敗リスク OR≈1.78 |
感染・創傷治癒遅延・骨代謝障害・免疫低下 | 血糖コントロール(HbA1c<7.0%)、感染予防、術後管理徹底 | Diabetes Mellitus and Dental Implants: A Systematic Review and Meta-analysis (2022) |
| 骨粗鬆症 | 10年生存率 約90〜94%(有意差は限定的) リスク比 RR≈1.09(95%CI 0.79–1.52) |
骨リモデリング障害、ビスフォスフォネートとの関連 | 投薬内容確認、薬剤休薬の可否を主治医と相談 | Smoking, Radiotherapy, Diabetes and Osteoporosis as Risk Factors for Dental Implant Failure (PLOS One, 2013) |
| 貧血 | 明確な数値報告少ないが、約88〜92%に低下傾向 | 低酸素状態による骨再生遅延 | Hb10g/dL以上を確保してから手術 | (国内臨床指針:日本口腔インプラント学会「全身疾患とインプラント治療」, 2023) |
| 高血圧・心疾患 | 手術期リスク↑、長期耐用年数は約92〜95%で大差なし | 動脈硬化→骨血流低下 | 術前評価・血圧管理・少量埋入で対応 | (日本循環器学会ガイドライン・文献レビュー, 2022) |
| ステロイド長期使用 | 耐用年数低下(10年生存率 約88〜92%) | 骨形成抑制、免疫低下、副腎機能抑制 | 投薬量の把握、副腎クリーゼ対策、慎重な埋入 | Impact of Corticosteroid Therapy on Dental Implant Survival (Clin Oral Implants Res, 2017) |
| ビスフォスフォネート系薬剤 | BRONJ発症時にインプラント脱落率極めて高 生存率 約80〜90%に低下することも |
骨代謝抑制による壊死 | 原則禁忌、薬剤休薬・医師連携・慎重適応 | Bisphosphonate-related Osteonecrosis of the Jaw: Review (J Oral Maxillofac Surg, 2010) |
| 抗血栓療法中 | 手術時出血リスク↑、生存率 約92〜95%(大差なし) | 出血過多による感染リスク | 抗血栓薬継続+局所止血、少数埋入で対応 | Management of Antithrombotic Therapy in Dental Implant Surgery (J Clin Med, 2020) |
| 喫煙 | 10年生存率 約85〜90%(非喫煙者より5〜10%低) 失敗リスク OR≈2.40 |
血流・酸素供給低下、感染・骨結合障害 | 禁煙指導(術前1週間+術後2か月以上) | Smoking and Dental Implants: A Systematic Review and Meta-analysis (2022) |
| 放射線治療歴(顎部) | 10年生存率 約80〜90%以下(RR≈2.28) | 放射線性骨壊死、血管障害 | 原則禁忌、またはハイパーバリック酸素療法併用 | Smoking, Radiotherapy, Diabetes and Osteoporosis (PLOS One, 2013) |
| 自己免疫疾患(例:関節リウマチ) | 耐用年数やや短縮(10年生存率 約88〜92%) | 炎症性サイトカインによる骨吸収 | 疾患活動性が低い時期に施術、免疫抑制薬管理 | Dental Implant Outcomes in Patients with Autoimmune Diseases (Clin Implant Dent Relat Res, 2018) |
大まかですが、耐用年数(ここでは10年生存率)に影響のある疾患です。
特に喫煙は、血流を悪化させ治癒を遅らせるだけでなく、10年生存率へのリスクも非常に大きいことがデータから伺えます。
治療を期に禁煙も視野に入れていただければ、と思います。
インプラントの寿命を延ばすためのポイント
定期的なメンテナンスの重要性
寿命を延ばすには、3~6か月ごとの定期検診が不可欠です。噛み合わせや骨の状態を確認し、専門的クリーニングで汚れを除去します。
- 歯科医師の指導に沿ったセルフケア
- 専用歯ブラシ・歯間ブラシの使用
- プロによるバイオフィルム除去
健康的な生活習慣の維持
口腔と全身の健康は密接に関連します。生活習慣の改善がインプラント長寿命の基盤となります。
- バランスの取れた食事:骨と歯茎を健康に保つ
- 禁煙:インプラント周囲炎の最大リスク要因を排除
- ストレス管理:歯ぎしり・食いしばりの軽減
インプラントが寿命を迎えた場合の対処法
再手術の必要性と流れ
寿命を迎えた場合、状態により再手術が必要となります。一般的な流れは以下の通りです。
- 診査・診断
インプラントの不具合が、何が原因で起こっているか診断します。
3D CTによる撮影・診断をおこない、インプラント埋入位置とその周辺の顎の骨の状態や周囲の組織の状態を詳しく調べます。

- 古いインプラントの除去
インプラント周辺の骨や組織を傷つけないように慎重にインプラントを除去します。

- 治癒期間(2ヶ月程度)
インプラントを除去後は、患部と周辺組織の回復を待ちます。

- 骨造成(必要な場合)
あごの骨量が足りずに再手術の場合、骨移植や再生療法を行ってからの治療となります

- 再度の埋入手術
傷口が治癒したのを確認後、新しいインプラントの埋入手術をおこないます。

- 上部構造の装着と調整
新しい人工歯を装着します。噛み合わせに問題がないかを慎重に確認、調整します。

当院の治療/通院期間
◆顎の骨に問題がなく骨造成などの処置が必要ない場合
インプラントを除去して2か月ほど治癒期間をおきます。
その後通常のインプラントと同じ流れです。
期間は6か月~8か月で通院期間は4~6回くらいとなります。
◆顎の骨が少なくなっていて骨造成などの処置が必要な場合
インプラント除去して2か月ほど治癒期間をくらいおきます。
その後、骨造成とインプラントの埋入手術をおこないます。
期間は8か月~15か月で通院期間は6~10回くらいとなります。
※骨造成の有無にかかわらず、治療期間と通院回数には個人差があります。
交換費用と保険適用
再手術は自由診療。費用は症例により異なります。保証制度を設ける医院もあり、多くは定期メンテナンス継続が条件です。
- 医療費控除:所得税還付の対象
- デンタルローン:分割払いが可能
当院では、歯移入したインプラントについては10年間の保証がついています。
万が一、インプラント部分に破損や不具合が起きた場合は、無償で対応いたします。
※年2回以上の定期的なメンテナンスを継続して受けていただくことが、保証適用の条件となります。
よくある質問(Q&A)
- Q. インプラントは一生持つのか?
- 平均寿命は10~15年ですが、ケア次第で20年以上使えるケースもあります。人工物である以上、劣化やトラブルの可能性はあります。定期メンテナンスと丁寧なケアが最重要です。
- Q. 寿命が来た場合の対応は?
- 上部構造の破損なら修理・交換で済む場合もあります。インプラント本体に問題があれば再埋入または他治療法を検討します。早期発見・早期対応がその後の治療を左右するので、日頃のメンテナンスはもちろん、おかしいな?と思ったらすぐに歯科医師に相談しましょう。
インプラント治療についての費用や期間、治療の流れや痛みの不安などについて、当院では無料カウンセリングをおこなっております。遠慮なくご相談ください。
柏クレイン総合歯科・矯正歯科では、インプラント治療について対面でのご相談、無料カウンセリングをおこなっております。
※各日13:00/18:30となります。
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インプラント治療についての不安や分からないこと、費用のことなどお気軽にご相談ください。
コラム監修

柏クレイン総合歯科・
矯正歯科院長
鶴田 正
- ・医療法人社団友正会 理事長
- ・口腔外科医
- ・インビザラインドクター
歯のトラブルでお悩みの方は、ぜひ一度「柏クレイン総合歯科・矯正歯科」にご相談ください。
丁寧なカウンセリングと診察に基づいた治療で、患者様の健康的な歯と口の状態をサポートいたします。
・好きな食べ物:温泉卵












