インプラントは何歳まで可能か?年齢制限や高齢者のリスクを解説
2025年11月7日
「インプラントに興味があるけど、自分の年齢でも大丈夫?」
「高齢の親にインプラントを勧めたいけど、リスクが心配…」
診療の現場では、インプラント治療に関する年齢のご質問をよくいただきます。 特に、ご高齢の方やそのご家族から、治療の可否について相談を受けるケースが増えています。
結論から言うと、インプラント治療には明確な年齢の上限はありません。
大切なのは、年齢の数字そのものよりも、「身体全体の健康状態」です。
この記事では、インプラント治療の年齢制限や、高齢者の方が治療を受ける際のリスクと注意点について、詳しく解説していきます。
インプラント治療の基本とメリット
まずは、インプラント治療がどのようなものか、基本的な部分から見ていきましょう。
インプラント治療とは何か
インプラント治療は、虫歯や歯周病、あるいは事故などで歯を失ってしまった部分の顎の骨に、チタン(ジルコニアなどもありますが)という金属でできた人工の歯根(インプラント体)を埋め込む外科的な治療法です。 この方法は、失った歯の機能と見た目の良さ(審美性)を回復させることを目的として行います。
インプラントの構造は、大きく分けて3つのパーツから成り立っています。
- インプラント体(人工歯根): 顎の骨に直接埋め込む、ネジのような形をした部分です。
- アバットメント: インプラント体と被せ物をつなぐ土台となる部分。
- 上部構造(人工歯): 見た目に関わる、セラミックなどで作られた歯の形をした被せ物です。クラウンとも呼ばれています。
治療の大まかな流れとしては、まずカウンセリングと検査を行い、治療計画を立てます。 その後、インプラント体を埋め込む外科手術を行い、骨とインプラントがしっかり結合するのを待ちます。 結合が確認できたら、アバットメントと上部構造を装着して完了となります。
使用するインプラント体や骨の状況にもよりますが、期間としては一般的には4ヶ月から8ヶ月程度を要します。 他の治療方法、例えば矯正などと並行して行うこともあります。
インプラント治療の主なメリット
インプラント治療には、他の治療法にはないメリットが多くあります。
最大のメリットは、ご自身の歯とほとんど変わらない審美性と咀嚼機能を取り戻すことが可能な点です。
もともとの歯と同じように顎の骨でしっかり支えられているため、硬いものでもしっかりと噛むことができ、食事を存分に楽しめます。
入れ歯などでは噛み合わせに違和感があったり、噛む力が弱かったりという事があります。
この咀嚼機能の回復することで、生活の質を大きく向上させることが期待できます。
また、周囲の健康な歯に負担をかけないという特徴もあります。 例えば、ブリッジ治療では両隣の健康な歯を削る必要がありますが、インプラントは失った部分だけで治療が完了するため、他の歯を守ることにつながります。
さらに、適切なメンテナンスを行えば、長期的に安定して使用できる点も大きなメリットです。 もちろん、外科手術であることや費用面といったデメリットも存在しますが、成功すれば非常に満足度の高い治療法と言えるでしょう。
インプラント治療の年齢制限と適応
では、本題であるインプラント治療と年齢の関係について掘り下げていきましょう。
インプラント治療は何歳から受けられるか
インプラント治療を「何歳から」受けられるかというと、一般的には顎の骨の成長が完了する18歳〜20歳以上が目安となります。
なぜなら、成長期の若い方がインプラント治療を行うと、その後の顎骨の成長によってインプラントの位置がずれてしまい、歯並びや噛み合わせに問題が生じる可能性があるからです。 ですから、特に20代前半の方は、骨の成長が完全に止まっているかを慎重に判断してから治療を行う必要があります。
年齢だけでなく、患者さんご自身の全身の健康状態や、喫煙の有無、お口の中の状態など、さまざまな要素を総合的に考慮して治療の可否を判断します。 自分は受けられるのかどうか、まずは医師に相談することが大切です。 現在、多くのクリニックでは無料相談などを行っていますので、気軽に相談してみると良いでしょう。
当院でも対面による無料カウンセリングや、LINEでのご相談・ご質問を受け付けております。
年齢によるインプラント治療の制限
一方で、「何歳まで」という年齢の上限については、実は明確な制限はありません。 よく「70歳や80歳でも大丈夫ですか?」と聞かれますが、答えは「健康状態によります」となります。
つまり、年齢制限の有無で言えば「上限はない」のです。 若い方、例えば30代の方でも、重いご病気をお持ちでコントロールができていない場合は治療が難しいことがあります。 逆に、70歳以上の方でも、全身的に健康で、顎の骨の状態も良ければ、問題なくインプラント治療を受けていただくことが可能です。
年齢という数字だけで判断するのではなく、お一人おひとりの健康状態に合わせた治療計画を立てることが何よりも重要です。 治療に時間はかかりますが、それに見合う価値があると感じられる方も少なくありません。
実際、当院でもインプラントでの治療後、「食事が美味しく食べられる」「見た目が良くなった」と仰られる方も多く見てきました。 これからも、この考え方が変わることはないでしょう。
高齢者がインプラント治療を受ける際の条件
70代以上の高齢の患者さんがインプラント治療を受ける際には、いくつかの条件があります。
まず最も重要なのが、全身的な健康状態です。 高血圧や糖尿病といった持病がある場合は、かかりつけ医と連携し、それらの病気がきちんとコントロールされていることが条件となります。
次に、インプラントを支える顎の骨の質と量が十分にあることです。 長年入れ歯を使っていたり、歯周病で歯を失ったりした場合は、骨が痩せてしまっていることがあります。 その場合は、骨を増やすための特別な処置が必要になることもあります。
そして、ご本人が治療に対して前向きで、治療後もご自身でしっかりとお口のケアができることも大切です。 インプラントは、抜歯後の審美性や機能性を回復するために、非常に有効な選択肢の一つですが、誰にでも適応となるわけではないのです。
インプラント治療における健康状態
これまでお話ししてきたように、インプラント治療の成功には年齢よりも健康状態が大きく関わってきます。
年齢よりも重要な健康状態のチェックポイント
インプラント治療を安全に行うため、私たちは年齢に関わらず、以下のような健康状態のチェックを必ず行っています。
- 全身の健康状態: 糖尿病、骨粗しょう症、心疾患、高血圧などの持病の有無とそのコントロール状態を確認します。服用中のお薬についても全てお伺いします。
- 口腔内の状態: 歯周病の有無は特に重要です。歯周病菌はインプラントの成功率を大きく下げる原因となります。また、残っている歯の状態や噛み合わせ、顎の骨の量や質をCT撮影などで精密に検査します。
- 生活習慣: 喫煙は血流を悪くし、インプラントと骨の結合を妨げる大きなリスク因子です。
50代、60代と年齢を重ねるにつれて、何らかの持病をお持ちの方が増えてきます。 ご自身の健康状態をきちんと把握し、歯科医師に正確に伝えることが、安全な治療への第一歩です。 定期的な健康診断はとても大切です。
インプラント治療が適さないケース
残念ながら、すべての方がインプラント治療を受けられるわけではありません。 以下のようなケースでは、治療が難しくなったり、適さなかったりすることがあります。
- コントロール不良の重度の全身疾患: 糖尿病や心疾患などが重度で、お薬などでもコントロールできていない場合。
- 顎の骨の量が極端に不足している: インプラントを支えるための骨がほとんどない症例。
- 重度の歯周病にかかっている: まずは歯周病の治療が最優先です。お口の中の状態が悪く、基本ができていないとインプラントも長持ちしません。
- お口の清掃状態が著しく悪い方: ご自身でのケアが難しい場合、インプラント周囲炎のリスクが非常に高くなります。
- 治療へのモチベーションが低い: 治療後のメンテナンスに通えないなど、協力が得られにくい場合も治療は難しくなります。
歯を失って不安な気持ちはよく分かりますが、これらのケースでは、入れ歯やブリッジなど他の治療法を検討することをお勧めしています。
高齢者のインプラント治療に関するリスクと注意点
高齢者の方がインプラント治療を受ける場合、若い世代とは少し異なるリスクや注意点があります。
年代別/インプラント10年生存率
海外のシステマティックレビューでは、歯科インプラントの全体的な10年生存率は非常に高く、約96%と報告されています。
一方で、年齢が高くなるほど生存率はやや低下し、65歳以上の高齢者では10年生存率が約91%と報告されています。
以下の表は、20~80歳代各年代における10年生存率の推定値です(各年代の細分データは報告例が限られるため、総括的な傾向を示しています)。
| 年代 | 10年生存率(推定) |
|---|---|
| 20~29歳 | 約96% |
| 30~39歳 | 約96% |
| 40~49歳 | 約96% |
| 50~59歳 | 約96% |
| 60~69歳 | 約96% |
| 70~79歳 | 約91% |
| 80~89歳 | 約91% |
出典: Howe et al. のメタ解析では、成人インプラントの10年生存率の総括値を96.4%と報告しており、Murali et al. など高齢者集団の解析では65歳以上で約91%と報告されています。全般に高年齢群ほどやや生存率が低下する傾向が示唆されており、この表はそれらの研究結果を基に年代別の概数をまとめたものです。
高齢者のインプラント治療におけるリスク
高齢者の方のインプラント治療には、主に3つのリスクが考えられます。
- 骨密度の低下: 年齢とともに骨がもろくなる「骨粗しょう症」などにより、骨とインプラントが結合しにくくなる可能性があります。これにより、治療期間が通常より長くなることがあります。
- 慢性疾患(持病)の影響: 糖尿病の方は感染症にかかりやすく、傷の治りが遅くなる傾向があります。また、血液をサラサラにする薬を服用している方は、手術中に出血が止まりにくくなるリスクがあります。
- 治癒力の低下: 若い方と比較して、手術後の傷の治りが緩やかになる傾向があります。回復には個人差が大きいですが、この点は考慮しておく必要があります。
これらのリスクは、事前の精密な診断と、かかりつけ医との連携によって、可能な限り少なくすることが可能です。
過度に心配する必要はありませんが、このようなリスクがあることは理解しておきましょう。
高齢者がインプラント治療を受ける際の注意点
高齢者の方が安心して治療を受けるために、いくつか注意していただきたい点があります。
- かかりつけ医との連携: 持病がある方は、治療前に必ずかかりつけ医に相談し、歯科治療を受けても問題ないか確認書をもらうなど、医科と歯科の連携が不可欠です。服用薬の自己判断での中断は絶対にやめてください。
- 生活習慣の見直し: 喫煙や過度な飲酒は、治療の成功率に大きく影響します。これを機に生活習慣を見直すことをお勧めします。
- 無理のない治療計画: 体力的な負担も考慮し、無理のないスケジュールで治療を進めることが重要です。
- 信頼できる医院選び: 高齢者の治療経験が豊富な医院を選ぶことが大切です。入れ歯やブリッジなど、他の治療法のメリット・デメリットも丁寧に説明し、慎重に治療方針を決めてくれる歯科医師を見つけましょう。
見た目の改善だけでなく、しっかり噛めることで健康寿命を延ばすことにもつながるため、多くのメリットがある治療ですが、注意点をしっかり守ることが前提となります。
インプラント治療の費用とメンテナンス
治療を検討する上で、費用と治療後のメンテナンスは非常に重要です。
インプラント治療の費用相場
インプラント治療は、公的医療保険が適用されない自由診療です。 そのため、費用は全額自己負担となり、決して安いものではありません。
費用相場は、インプラント1本あたり30万円~50万円程度が一般的ですが、この料金は地域や各歯医者の方針、使用するインプラントメーカー、上部構造の材質などによって変動します。 また、顎の骨が不足している場合に行う骨造成(骨を増やす処置)などが必要になると、追加で費用がかかります。
費用が高いと感じるかもしれませんが、長期的に見て自分の歯のように使えること、周囲の歯を守れることなどを考えると、価値のある投資と考える方もいらっしゃいます。 治療を受ける際は、費用の内訳(検査、手術、被せ物など)を事前にしっかり確認しましょう。気軽に相談できる口腔外科や歯科医を見つけることが大切です。
インプラント手術後のメンテナンス方法
インプラントを長持ちさせるためには、手術後のメンテナンスが何よりも重要です。 「インプラントは人工の歯だから虫歯にならない」というのは事実ですが、歯周病と同じような病気、「インプラント周囲炎」にはかかる可能性があります。
インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支えている骨が溶け、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまいます。 これを予防するためには、以下の2つのケアが不可欠です。
- セルフケア: ご自宅で毎日行う歯磨きです。インプラントと歯茎の境目を特に丁寧に、専用の歯間ブラシなども使用して清潔に保ちます。
- プロフェッショナルケア: 歯科医院で定期的に行うメンテナンスです。通常3ヶ月~半年に1回程度、歯科医師や歯科衛生士が専門的な器具を使って、ご自身では取り切れない汚れの除去や、噛み合わせのチェック、レントゲンでの骨の状態の確認などを行います。
術後の管理をしっかり行うことで、インプラントを長く快適に使用することが可能になります。
インプラント治療に関するよくある質問
最後に、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
インプラント治療に関する一般的な疑問
- インプラントの寿命はどのくらいですか?
-
適切なメンテナンスを行えば、10年、15年と長期的に機能することが多くの研究で報告されています。中には20年以上問題なく使用されている方もいらっしゃいます。日頃の口腔ケアと定期検診が寿命を左右します。
- やはり年齢制限はあるのでしょうか?
-
これまでお話しした通り、明確な上限はありません。大切なのはお身体の健康状態です。ご高齢でも多くの方が治療を受けられています。
- 治療にはどれくらいの時間がかかりますか?
-
お口の状態や治療計画によって異なりますが、一般的に、下の顎で4ヶ月~8ヶ月、上の顎で6ヶ月~1年程度が目安となります。骨の状態によっては、それ以上かかることもあります。
- 治療後の食事で気をつけることはありますか?
-
最終的な被せ物が入れば、食事に大きな制限はありません。ご自身の歯と同じように自然な感覚で食事を楽しめるようになります。
インプラント治療のリスクと注意点
- 手術にはどんなリスクがありますか?
-
全ての外科手術にはリスクが伴います。インプラント手術の場合、術後の腫れや痛み、内出血などが起こる可能性がありますが、これらは一時的なものです。ごく稀に、下顎の神経を傷つけてしまい麻痺が残る、上顎の奥歯の手術で鼻の空洞(上顎洞)に穴が開くといった合併症の可能性もあります。事前のCT検査やサージカルガイドを使用した手術などで、このようなトラブルを避けるために細心の注意を払っています。
- インプラントがダメになる原因は何ですか?
-
インプラントを失う最大の原因は「インプラント周囲炎」です。これは、メンテナンスを怠ることでインプラントの周りに細菌が繁殖し、骨を溶かしてしまう病気です。放置すると、せっかく入れたインプラントを失うことになりかねません。
この記事を読んで、インプラント治療と年齢についての理解が少しでも深まれば幸いです。
インプラント治療の相談とカウンセリングの流れ
もしインプラント治療を検討されているなら、まずは専門のクリニックで相談することから始めましょう。
インプラント治療を受ける前の相談の重要性
治療を受けるかどうかの判断は、専門家の意見を聞いてからでも遅くありません。 事前の相談は、以下のような点で非常に重要です。
- 自分の状態を正確に知る: 自分のお口の状態がインプラントに適しているのか、他にどのような選択肢があるのかを正確に知ることができます。
- 不安や疑問を解消する: 費用や期間、痛みなど、治療に関する悩みや不安を歯科医師に直接ぶつけることで、解消することができます。
- クリニックや医師との相性を確認する: 長いお付き合いになる可能性があるため、信頼できるクリニック、話しやすい医師かどうかをご自身の目で確かめる良い機会です。
多くのクリニックでは無料相談を行っていますので、まずは予約を取ってみることをお勧めします。
当院でも対面による無料カウンセリングや、LINEでのご相談・ご質問を受け付けております。
カウンセリングで確認すべきポイント
カウンセリングを受ける際には、以下のポイントをしっかり確認しましょう。
- 具体的な治療計画: 今回の自分に必要な治療の流れ、期間、メリット・デメリットについて。
- 費用の総額: 提示された料金には何が含まれているのか、追加費用が発生する可能性はないか。
- 術後の保証やメンテナンス: インプラントの保証制度の有無や、治療後の定期メンテナンスの内容と費用。
- 担当する医師の実績: 担当してくれるスタッフや医師の経験や実績について尋ねてみるのも良いでしょう。
これらの内容をしっかり確認し、納得した上で治療を選択することが、のちのち後悔しないために大切なことです。
この記事が、ご自身にとって最適な治療法を選ぶ材料の一つとなれば、と思います。
インプラント治療をご検討中の方は、まず無料カウンセリングでご相談ください。素材の違いを正しく理解し、あなたに最適な治療方法を一緒に見つけていきましょう。
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インプラント治療についての不安や分からないこと、費用のことなどお気軽にご相談ください。
コラム監修

柏クレイン総合歯科・
矯正歯科院長
鶴田 正
- ・医療法人社団友正会 理事長
- ・口腔外科医
- ・インビザラインドクター
歯のトラブルでお悩みの方は、ぜひ一度「柏クレイン総合歯科・矯正歯科」にご相談ください。
丁寧なカウンセリングと診察に基づいた治療で、患者様の健康的な歯と口の状態をサポートいたします。
・好きな食べ物:温泉卵






